33歳~35歳
教わったことを伝えたい。恩返しがしたいと気づいた。
生産者であることの喜びを実感する消費者との交流食事会
旬の食材を題材に「旬の逸品やさん」ユーザーに向けて開催する食事会。
ねらいは消費者と生産者の直接的な交流。
当日朝に漁で捕った生ししゃも、浦幌の野菜を料理店に持ち込み、様々な分野の料理人が腕を振るう。
ししゃも骨酒、ししゃも刺身、天ぷら、カルパッチョ、リゾットなど和洋を問わず。
参加者全員がほぼ初体験の食を堪能する。
それは流通が複雑化されるなか、自ら生産した商品を消費者が目の前で評価してくれる貴重な瞬間。
同時にユーザーから意見を聞ける貴重な場。
好評だった三平汁は今は商品化されている。
出会いを重ねて気づいたこと、わがまち浦幌の魅力
都市や消費者との交流は数々の人生の師との出会いの場でもあった。
そして共有する時間のなかで生産地の意義や重要性を再認識する。
一方で自分を受け入れ、夢を叶えてくれた、十勝・浦幌町での自分の位置づけをより強く意識するようになる。
浦幌町は一次産業の資源に恵まれた町。
だが、生産者の高齢化や、若い世代の町外への流出などでその資産を生かしきれずにいる。
町の人たちは、町から生まれる生産物の本当の価値、そして心や気持ちの素晴らしさに気づいているのか…。
自分にしかできない役割を考える。
生産者が加工、販売に携わる厳しさ、ハードワークをこなす毎日。
ししゃも漁期の起床は深夜1時。
メールをチェックして2時には加工場で加工の準備をはじめる。
3時には出港し、夜明けとともに漁を開始。
妻も未明に加工場に出て、アルバイトの主婦仲間たちと天日干し用のししゃもを作る。
時間は朝の5時から8時までの3時間。
午後4時頃漁を戻ってくる前に妻は干物を取り込みマイナス30度の冷凍庫に保存。
この後ふたりで用途別にししゃもを処理し、7時過ぎに帰宅。
妻は家事と子どもたちの面倒を見て、夕食後デスクワークをこなす。
就寝は10時。
毎日、この生活の繰り返しだった。
船の転覆事故、九死に一生。訪れた転機。
ししゃも漁後半にさしかかり、加工作業もピーク。
この時期は徹夜が続く。
体力の限界に挑戦しながらの漁。
船に乗って15年が過ぎるが、初めて船員室で仮眠をとっていた。
転覆事故はこうした状況で起こった。
座礁から転覆まではほんの2、3分。
もっと眠りが深かったら…。
漁師の生活は命がけの反面、毎日がワクワクする遠足気分。
獲物が見えた瞬間の喜び、自然を全身で感じる喜び、本当の至福がある。
でもそろそろ遠足から帰る時が来たかもしれない。
猛烈な勢いで「死」に引き込まれていった、あの瞬間からの生還を通して、自分の使命〈命の使い方〉を考えた。